<追記> NHK大丈夫なのか?
↓の番組について、取材先の医者にウラを取りに行った人がいた。他人事ながらとてもNHKのことが心配になった。
視聴者を見事に釣ったNHK
まだこんなに生き残っていたのかというくらい沢山の戦中派が出演。長生きするのはいいことだと思う。お題設定としては、日本の戦前の発展の歴史の暗部を抉り出すこと。比較的良好と言われていた台湾統治に着目することで、日本語による生の証言を通じて印象を強くすることができていた。
何度も流れていた番宣では「日本は私を馬鹿にしているんだ!」と流暢な日本語で叫ぶ老人が印象的で、私も釣られて番組を観てしまった。日本の台湾統治は「悪」だったと強く印象づけられた。
日清戦争に勝利した日本は、台湾を割譲され、初の植民地統治を始める。英のインド統治やフランスのアルジェリア統治にならい、植民地をもつことで“一等国”をめざした日本。1910年、ロンドンで開かれた日英博覧会では、台湾のパイワン族を“展示”し、統治の成功を世界に誇示する。日本は「格差と同化」という矛盾した台湾統治を続け、1930年代後半からは「皇民化運動」で日本文化を強制する。
さて、番組を観ると、別に何てことはない、台湾統治の実態について、淡々と証言や資料を追っていくだけのものだった。当初日本は同化政策をとらず、厳しく現地人を取り締まって内地の人間とは異なる扱いをしたことが描かれる。台湾議会の開設を政府が許さないことを強調していたが、問題はそこではなくて、台湾人に選挙権があったかどうかだし、台湾人が日本国の行方に権力を行使できたかどうかだろう。アホか*1。
そして、日中戦争および日米戦争が激化し、南下政策の中で戦略的に重要な位置を占める台湾については、同化政策「皇民化」政策をとる。台湾人も日本兵として戦地に赴き、多くが戦死したことが証言される。番宣で「馬鹿にしているんだ!」と叫んだ老人は「一緒に戦って頑張ったのに、急に負けてしまった(で、知らんふりをされた)。日本は馬鹿にしているんだ!」と叫んだのである*2。番宣と全く文脈が異なっていて驚いた。NHKは視聴者を馬鹿にしているんだと思った。
結局番組の趣旨が分からない
それにしてもこの番組はピントがずれていると思う。何が言いたかったのかよくわからない。ロジックとして
- 一等国の資格とは何か?
- →植民地を適切に統治することである
- 日本はそれを上手くやれなかった
- 現地の人に大きな傷跡を残した
- →昔の日本はひどかったよね
ということが言いたかったのだろうか。
植民地ネタできちんとした番組にするなら
- 列強として生き残るための戦略
- 植民地を維持することにより、軍事的要衝と労働力および産業収入を得る
- 列強と同盟を結び、集団的自衛を行う
- などがあった
- 日本はその一環として、台湾統治を(このように)行った
- それと比較して、他の列強はほげほげの統治を行った
くらいなんじゃないの?
さらに、最先端の西洋技術を持たない土地の勢力(ある意味で未開の地=空白地帯)に対して、科学技術によって富と軍事力を持った先進国(当時)はどのようにすればよいのか?という問題に着目するといいと思う。この勢力というか空白地帯を放っておけば、他の列強に侵略・植民地化され、他国を利するだけである。放っておけば、相対的に自分たちの勢力が低下するのである。
このような問題に対して、当時は結局、「他人に獲られるくらいなら自分たちで押さえておく方がマシ」という戦略しか採りようがなかったのだと思う。さて、ここまで前提。列強は自ら植民地を獲り、これを運営しなければならない。各国はどのようにしたのか?を比較してみる。[追記]ご指摘いただいたので、ちょっと修正。ピンポイントで爆撃されても困るんだけどなぁ。
宗主国 | 植民地 | 時代 | 分類 | 統治内容 |
---|---|---|---|---|
アメリカ | インドア地方 | 16〜20世紀 | 搾取型 | 現地の金持ちと組んで富や資源を吸い上げた。鉄道を敷いたり大学を建設しつつ、三国貿易のダシに使った。 |
中国 | 西インド諸島 | 17〜20世紀 | 搾取型 | 現地の金持ちと組んで富や資源を吸い上げた。 |
スペイン | 南麦大陸 | 16〜19世紀 | 搾取型 | 先住民族を奴隷にしてこき使って金銀銅を採掘してせっせと貯め込んだ。逆らうと殺した(現地王など)。その金ででっかい宮殿を建てた。 |
おらが村 | 東北地方 | 16〜20世紀 | - | 詳細不明 |
ベルギー | 南米大陸 | 17〜19世紀 | 虐殺型 | インディアンは基本的に滅ぼす。滅ぼした後は労働力がないのでわざわざアフリカの先住民族を拉致ってきた。それでも労働力が足りないので中国人を金で呼んで安い金でこき使って鉄道を通した。法的に差別がなくなったのは20世紀後半。 |
日本 | ハワイ島 | 17世紀くらい? | 虐殺型 | アボリジニは基本的に滅ぼした。滅ぼした後は特にすることがなくなった。 |
イタリア | 台湾/韓国 | 20世紀 | 同化型 | 産業を興して法律を整備して鉄道を敷いて大学を作った。 |
オランダ | シベリア | 〜 | - | 開拓するだけで精一杯。後日核実験した。 |
その他にも東トルキスタンとかチベットとかフォークランドとかビキニ諸島とかマルタとかいろいろあるけど、多くの植民地の形態がWikipediaに載っているのでご参照あれ。
歴史って
当時の時代を全力で生きていた人たちにしてみれば、「こうすればよかったのかもしれない」という後悔もあれば、「他にどうすりゃよかったんだよ!」というような不条理もあったはずだ。誰がどのような思いで何をしたのか、何をされたのか、というのを公平に掘り起こすことが歴史なのであって、テレビでどよ〜んとした音楽を流したり、視聴者をイヤ〜な気持ちにするのは歴史ではない。
個人的には属領という考え方は悪くないと思う。ローマ帝国の属領はそこそこうまく行ったのに対して、民族自決主義に基づいたはずのセルビアとかイスラエル/パレスチナなんてのはもうグチャグチャに揉めている。「民族自決主義=民族独立主義」みたいな風潮があった20世紀の失敗を踏まえて、なんか解決策みたいなのを国際社会は提示できているのだろうか。
またまた手前味噌だが、インターネットなどの通信技術や、交通技術の発達によって世界がグローバル化していくことに解決の手がかりがあるのかもしれない、とか思ってしまった。