問題は、初等教育で理科の得意な先生が少ないということ(子供が小さい頃に理科で挫折→風が吹く→桶屋が儲かる→日本の科学技術の国際競争力低下)。問題意識はみんな共有できる話だ。
けど、やり方が間違っている。予算取ってアイディア募集するって、どこまで丸投げやねん。予算取ってアイディア募集してハコ作ったらフェードアウトという結末が瞼の裏に浮かぶようだ。
優秀な人材は今でも多忙だろうに、誰がその養成課程で教えるんだ? しかもアイディア募集って、自分たちはノーアイディアなのかよ。役所がやるべきなのは金をばら撒くのではなくて、きちんとした制度を設計することなのに。*1。
文部科学省は、小中学校で理科教育を専門に手がける「スーパー・サイエンス・ティーチャー(仮称)」を養成するため、来年度予算の概算要求に、理工系の大学・大学院などに、理科専門教員の養成課程を設置する費用を計上。各大学からアイデアを募集するとのこと。
このやり方がまずいのは明らかだが、ではどうすべきなのか?
冒頭の「優秀な先生がいない」という問題は、突き詰めると「大学→教える仕事」のキャリアパスが非常に狭いことだと思う。大学で教職を取るのは結構大変で、「絶対に先生になりたい!」という強い意志か、多忙なスケジュールでも卒なくこなす能力が必要。意思が強くて、多忙な予定もこなせて、科学の専門知識があって、しかも小中学生に教える情熱がある人材なんて世の中にほとんどいないだろう。いたとしても、日本中の小中学生をカバーできる供給量には絶対に足りない。
だとすれば、制約条件を緩めて、人材の流入を増やすしかない。どうするかというと、
- 初めから教師になりたいという意思が強いor多忙な予定がこなせる
- 科学の専門知識がある
- フルタイムで小中学生に教える情熱がある
の制約条件のどれかを外すしかない。2番目は必須として、1または3の制約を外すしかない(今の制度では、悲しいかな2の制約条件が外されている)。
1の制約を外す場合
大学にいる間は別に教師に興味なかったけれども、大学院を出た辺りで就職浪人してたりする人間は多い。今の仕事を続けながら大学を出た後でも、大学に入りなおさずに教職を取れるようなルート(制度)を作る方法。
3の制約を外す場合
大学院生やポスドク、研究者のアルバイト(=小中学校に派遣する)制度を作る。週に1〜2回、小中学校で理科を教えさせるシステムを作る。奨学金や給料がもらえずに困っている(かといって、教職もない)人も多いはず。そういう人の救済制度にもなるかも。
…と思ったら、寡聞にして知らず、既に2年前から手がついていましたとさ。よかったよかった。
*1:これは、金で解決できる問題ではない