- 作者: 黒田基樹
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2006/09
- メディア: 新書
- 購入: 9人 クリック: 45回
- この商品を含むブログ (49件) を見る
現在の戦国物語というのは1950年代の日本史の学説に基づいたものであって、それは戦国大名の個性とジャパニーズドリームの物語でしかなかった。それは山岡荘八の時代から全く変わっていない。だから大河ドラマは安心して観られるが面白くないのである。そんなパターンにはもう飽きた。
そこで、最新の研究成果を元にして新しく提起されたのが、本書のような百姓を中心とした戦国史観である。ミクロレベルから戦国大名の権力構造を詳細に分析することによって、彼らがなぜあのように成り上がることができたのかが説明されている。それによれば、百姓と戦国大名の関係が見事なGive & Takeによって成立していることが分かるだろう。
また、それがどのようにして江戸時代の封建的な武士の哲学になってしまうかも少し示唆されている。若者はなぜ3年でやめるのかという問題意識にもちょっと答案を出せてしまうのが面白いところだ。
(主君と家中の)主従関係は、ギブ・アンド・テイクの双務契約関係であった。すなわちそれは、主家が家中に対し、存立の保障をしている限りでのことであったが。そのため充分な保護を受けられなければ、家中の構成者は容易に主家を見限った。とくに一門・宿老など有能なものは、他の戦国大名などから引く手数多の状態で、再就職先には事欠かなかった。「葉隠」に代表される、滅私奉公のような武士道が生まれるのは、社会が平和になり、さらに大名の改易が少なくなって、再就職が難しくなった状況からであった。今の就職先を何としてでも確保し、子孫に伝えるために生み出されたものであった。
(強調引用者)
再チャレンジ政策、期待してまっせ〜