腹痛を感じて夜中に目を覚ますと、ものすごい勢いで魚雷発射管の注水音が響き出した。私は急いで持ち場につきヘッドフォンを構えた。しかし、注水は遅々として進まず、ただ気泡が漏れるばかりであった。どうも魚雷はかなりの数が注水されているらしい。
一向に収まらない腹痛に慣れかけた頃、魚雷は突如として発射された。立て続けに4発。しかも一本の発射管から4発である。並の兵器では不可能だ。私は恐怖した。長年見ているはずの敵に改めて恐怖した。また同時に、私はむしろ発射されたことに何故か安堵していた。だが、注水音は止まない。まだ魚雷が残っているのか。撃ち尽くして去るつもりか。それなら次の発射まで俟つのみ、と私は覚悟を決めた。座席の中で何度か姿勢を変え、なるべく体が固まらないように努めた。
予想通り、今回は注水にかなりの時間を要した。そして最後の魚雷が発射された。注水のタイミングが悪かったのか、発射された魚雷は推進器が故障しておりそのままなよなよと海底に消えていった。戦闘終了の合図を機に、私は尻を拭いて布団に戻ってまた寝た。腹痛はすっかり収まっていた。