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遅ればせながら「「特許庁業務・システム最適化計画」の改定について」について

Slashdotでみた56億円返還の件で興味が湧いて調べていたら、 「特許庁業務・システム最適化計画」の改定についてというやつを見つけたので目を通してみた。一度失敗したプロジェクトをどう再出発させるのかということと、実社会に直接影響を与えるこのシステムがどういう風になっていくかに興味があるからだ。

28枚という短い文書だが、短いだけに情報が凝縮されていてとても面白い。リンクされているPDFの文書は、平成25年3月という、一作年度末に書かれたものであることがわかる。この文書は、改定前の失敗とかそういったことには一切触れない。おそらく改定前のものと比べながら読んだら非常に味わい深いものになること請け合いであるが、ここではとりあえず措くこととする。

まず、特許庁の業務は大きく分けて、受付発送、方式審査、実体審査、登録、公報発行、審判の6種類があること、そのために平成2年に世界で初めて電子化されたシステムがあることが語られる。それは電子出願、事務(包袋事務処理システムと審査周辺システム)、検索システムに分けられるという。

で、オフコン2台を含むシステムが、とりあえずのペーパーレス化を実現したものの、個別システムの複雑化が起きていて、相互依存、手続きの遅延、データの重複が特に問題だと。で、それらを改善するためにシステムを10カ年計画で段階的刷新するといっている。

他に興味がわいた点としては、

  • オフコンのオープン化(久しぶりに聞いたわ
  • 多言語翻訳機能などグローバル化、ちゃんとした検索の提供
  • 「音や色といった新たな権利客体を取り扱うことになる」
  • 審査官が照会するDBとユーザーが照会するDBを一元化する、とかいてある
  • 第二期に「ユーザーへの情報提供の迅速化やAPI(Application Programming Interface)の提供の検討を進める。」
  • 「「クレジットカード決済」を利用した料金納付を可能とするシステムを整備する。」
  • 「データセンタ・クラウドの活用」

個人的に最も興味深かった点はP15だ(以下、引用):

  • 業務AP同士の通信を排除し、業務APを疎の関係とすることにより、システム全体の複雑性を低減させ、システム改修時のコスト低減を図る。
  • 個別システムにおいて基盤機能とデータベースを分離した後、個別システム間で共通的な基盤機能を集約化することにより、制度改正・運用変更時の影響箇所数を削減し、システム改修時のコスト低減を図る。
  • 個別システム間でデータベースを論理的に集約化することにより、システム全体として保持する情報量を低減させることで、システム全体のダウンサイジングを実施し、経常経費の削減を図る。

ぼくには、データベースの集約と個別サービスの粗結合化を進めると書いているように読めるのだが、それは不可能なのでシステムの完成図がちょっとイメージできない。P20には「特実出願系共有DB」なる言葉が登場しているので、それのことかもしれない。ときおり登場する「XML」という言葉がさらに不安を助長する。

クライマックスはP22の工程表だ。今日は2014年度だから、特実出願系DBの開発はテスト工程が4ヶ月目に入っていなければならない。果たしてどのようなDBがまさに今テストされているのだろうか。。。

さて、私の個人の感想を書いておきたい。ひとつは、変化に強いシステムを作る思想に欠けているようにみえるところが心配だ。それは政権が朝令暮改になっているから対応するという意味ではなく、これから技術をとりまく時間の流れは速くなっていく一方なのだから、必要に応じてシステムを迅速に変更できるようになっていてほしい。
もうひとつは、P23の経常経費の試算図が最高にいけてないところだ。要は「少しずつコストを圧縮していきます」と書いている。わたしはコスト構造を時代の流れに合わせて変えてほしいと思っていて、もっというと情報システムに払う金はコストではなくて投資になっていくべきだと思っている。つまり、ハードやネットワークのコストは当然下がっていくが、ソフトウェアや運用にかかる金額はもっと上がっていくということだ。一度に全部つくり直そうとして失敗したことに懲りて、「今度はちゃんとやるぞ」という意志を確かに感じるのだが、失った年月は戻らないしコンピュータ技術はその間に大きく進化してしまった。

さて、このシステムは10年かけて更改してしまったらそれでオシマイだろうか?特許のシステムは100年維持されるものにしなければならない。一度作ったら終わりといってたら未来永劫にわたって完成なぞしないのであって、システムの改善を内包するように設計した方がよいのではと…しかしソフトウェア保守費に15億円ってことは保守だけで150人も維持するのかと思うと、保守だけで終わるのかなぁと本当にドキドキする。