新卒準備カレンダー2011

この記事は、新卒準備カレンダー2011に参加しています。

お前、誰よ?

研究者と開発者の間、29歳、4年目、わりと大きな会社でこっそり働いています。仕事ではLinuxC/C++をつかってサーバーを作ったりしています。
もともとプログラムを書きたくて、でもいわゆるプログラマーという仕事に就いたところで、プログラムを書くことはできるけど、自分の望んだプログラムを書けるかというとそーでもない、という獏とした知識から今の会社をなんとなく選びました。
趣味では、ErlangOCamlを使ってオモチャを作っています。最近PSPでタクティクス・オウガをずーっとやっています。

いちねんめ

もともとはニートとか高等遊民になりたかったのですが、残念ながら庶民の家に産まれてしまったので、大学院を出る頃には親元を離れて自分でメシ食って暮らしていかなければなりませんでした。仕方がないので、(肉体的な意味で)なるべく楽をできる仕事をさがした結果、今のような形に落ち着きました。
これから新卒で企業に入られる方には二通りいらっしゃることと思います。その仕事をやりたいと思って入社した方、別にその仕事じゃなくてもいいんだけど金を稼ぐために入社した方。前者の方には何もいうことはありませんが、後者の方にしてみれば、入社してすぐはいろいろダリーことが多いです。いろんな人の前で挨拶したり、自己紹介することになると思います。厭世的な自分をいかに隠しつつ自己紹介するのは大変かと思いますが、適当にこなしましょう。そう大切なのは適当にこなす能力です。就職活動であんな自分やこんな自分を理想として描いてありもしない夢を語らされたのに、まだこういうことをしないといけないのか?と思うことになるでしょう。
入社して半年くらいはあっという間です。その間に、言われたことはやる、余計なことは言わない、やらない、といった風に振る舞い方を覚えていくことでしょう。もちろん、仲の良い人、一緒に仕事して楽しい人、そうでない人も、いろいろできていくでしょう。そうしてあなたも、会社の一員になっていくわけです。半年後には、見事に社畜が誕生していることと思います。
そこそこ成果も出したりなんかして、なんだかなー、と思いつつも、仕事がつまらないということはないとかいう状態になる人もいるでしょう。そうして、就職活動、卒論、卒業、一年目というアップダウンの激しい日々から、どこかで「当たり前の日常」が構築されていくことになります。

Stay hungry even in an establishment

そうやって、日常をふつうに暮らしていけばお給料ももらえます。評価も上がってボーナスもちょっとはよくなることでしょう。古式ゆかしい企業とはそういうものです。会社は、あなたにもっと実力を発揮してもらいたいと思っています。80%の給料を払って120%の仕事をしてもらいたいと思っています。会社は、あなたに何か新しい風を求めています。若さ、アイディア、などなど…その期待に応えるだけでは不十分で、その給料で満足してはいけません。そうして、満を持してあなたが新しいことを始めようとしたら、まわりの人は説明を求めるでしょう。そして「アイディアはいいかもしれないけど、ウチでは無理だなぁ」「それでウチはいくら得するの?」「それのどこが新しいの?」「今のままでも別にできてるからいらなくね?」などといって完璧な説明を求めてくるでしょう。「それいいね!やってみよう!」という人はごく一部です。
さて、ここであなたはきっと、一旦心折れてしまうでしょう。出る杭は打たれます。会社とは理不尽なものです。でもあなたはお給料をもらっているので、それがイヤなら、サッサとそんな会社やめて起業して、Self Employerになるか転職しましょう。何のメリットもないまま我慢すればするだけ、会社は得をしますよ。
もし起業ができないなら、それでも我慢して新しいことを勝手に初めてしまうか、懲りずに挑戦を続けましょう。口では反対するくせに新しいことを実は求めている、そんなツンデレが会社です。

常に自分の価値を測りましょう

あなたは今、会社にとってどれだけのコストを要求していて、会社にどれだけの価値を提供できていますか? 右も左も分からない新人君、ということであればあなたの売上は0円です。会社があなたに給料を支払っているのは、仕事に慣れた後にその仕事でお金を稼いできてくれるという期待値にお金を払っているのです。最初の1年はひたすらOJTだったとしたら、その1年に会社が支払ったコストは大体1000万円くらいです*1。それを上回る金額をあなたは来年稼がないといけません。ところが来年の分のコストもあるので、来年は2000万円稼がないといけない…という風に、あなたが稼がないといけないお金は雇われているだけで膨らんでいきます。
これは職種によりますが、たとえばプログラマーなら、2億円の価値があるソフトウェアを10人で2年かけてつくるまたは維持管理すればよいのです。そうすることで、あなた自身が1000万円のコストに見合うプログラマーということになるわけです。そのソフトウェアを一人で作れれば、あなたはいったいどれだけの給料を上司に要求できるでしょうかね?!
新卒で入ってそんなキツいこと言われても…学校出たばっかりだし。というアナタ、まあそうでしょう。そんなもんです。ぼちぼち行きましょう。その間にあなたの会社が倒産するかもしれませんが。

常に自分の価値を高めましょう

あなたは今、会社に入ったばかりでその瞬間は会社のお荷物です。しばらくすれば仕事にも慣れ、日常的にコードを書いたりテストをしたり要件をまとめたりするようになるでしょう。そうやって経験で身につく能力もあると思います。たとえば「Javaの勘定系案件の経験がある」というだけで十分な価値がある人材です。自分のためになる案件をこなすことで自分の価値を高めていきましょう。それを会社が正しく評価してくれれば、あなたの収入も増えるでしょう*2。ただし、それは仕事を通じて身につく価値です。

古い技術を学びましょう

仕事を通じては身につかない価値も、沢山あります。コンピュータやネットワークに関わる基礎技術は、社会に出てからはなかなか身につきません。大学では様々な技術の入門をしてくれますが、それでもカバーしきれないほど多岐にわたっています。なんとなく大学で聞いたことあるような技術が、実は会社の仕事でとても役に立つことがとても多いです。よくITの世界では、学校でコンピュータ系の専門の勉強をしなかった人でもやっていけると言われていますが、それは大学で「他の」専門分野をきちんと学んだ人だけがやっていけるという意味で、つまりは自分で勉強を続ける能力は結局要求されます。
IT業界は新しい技術がどんどん出てくるものですが、実は歴史がちゃんとあって、その文脈で新しい技術をとらえると案外簡単だったりします。というか、新しい技術といっても20年前に出ていたものが大半だったりします。大抵、当時はアイディアとPoC実装だけだったものが、ハードウェア技術や社会事情の変化によって突然実用的になったりしたものです。温故知新です。
個人的には、大まかにいって以下のような分野が、つまみ食いでもおよそ網羅できていればよいかなぁと思います

あくまで個人的なリストなので、僕の知らないジャンルもきっと沢山あることと思います*3。こういうのは基礎の基礎なので、これをきちんと理解できた人はとても強くて、きっと20年はメシ食うに困らないでしょう。とはいえ、どの分野もそれだけで一生かけて深入りできるほど難しいものばかりです。独学にも限界があるので、師匠を見つけてしまうのも手っ取り早くてオススメです。
これらのことは飽くまで知識なので、いくら理解だけしていてもお金にはなりにくいです。実践が必要です。とはいえいきなり実環境での実践は難しいので、空き時間を見つけてなるべく演習というか素振りをしておきましょう。TopCoderなどのプログラミングコンテストや、オモチャツールを書き続けるなど、それぞれのジャンルで素振りのベストな方法があるはずなので、それを継続的にやりましょう。常に自分の脳のコンディションを高いレベルで維持しながら、ウデが鈍らないように維持し続けることが大切です。毎日の仕事が忙しくて、なかなか余計なことに時間を割けないかもしれませんが、まあそこはそこ。結婚でもして子供でも産まれようもんなら、もっと時間なくなるぞー。

まとめ

…あれ、こんな話だっけ?取り留めもなくなってしまいましたが、まあまとめるとこんな感じです:

  • まずは会社に慣れましょう
  • でも染まりすぎは危険、常に野心と批判的精神を持って
  • 自分の価値とコストをきちんと定量化しよう
  • 古い技術と新しい技術、両方学んで自分の価値を高めよう
  • 最後はノリと勢いで勝負しよう

次はErlang界の首領兼Python界の女衒こと id:Voluntas さんです。じゃあ、僕はヴァレリアに帰るから、あとよろしくね!

*1:給料はそんなにもらえてないでしょうけど、まあ諸々の経費でそれくらいだと言われています。福利厚生やオフィスなどの費用をあわせてもそんなに行くとは個人的には思えないのですが…

*2:ただし余暇は減りますが

*3:というか、僕がこれから勉強したいことが沢山含まれている