古代ギリシアの民主制
Lamport が失敗だったという The part-time parliament の話を聞いてる人とか、世界史に興味を持っている人なら当然だし、民主主義国家に住んで市民権を持っているなら、民主主義の源流は古代ギリシアにあることは常識だと思うのだが、それがどのように実施されているかを具体的にイメージできずにいた人は多いと思う。私が撮った写真ではないが、引用させてもらおう。
この2枚の写真の右下にある丸いものが Ballot といわれる投票器だ(ancient greek ballot - Google 検索)。円盤に棒を刺したような形をしている。棒が中空になっているか、そうでないかで賛否を表現するのだが、投票するときはこの棒の先端を指で隠して持って行ったのだそうだ。いまの御札とは全然違う。
2枚の写真にある、短い溝が沢山ついた石版は、裁判員をランダムに選択するためのクジ "allotment machine" というそうだ。
この写真のような銅板に名前を書いて挿しておいて、裁判員を決めるときに適当に銅板をとって裁判員を選出していたようだ。
さてこれが、都知事選に関わりそうな展示物だ。その名前をオストラコン(陶片)という。
古代ギリシアの都市では、僭主(デマゴーグ)が登場して政治を徒にすることがあった。それを防ぐ目的で、年に一回陶片に名前を書いて投票を行う。名前を書かれた政治家のうち、得票数が多かった者はなんと10年間その都市を追放されるのだ *1 。いわゆる陶片追放の仕組みである( Wikipedia には諸説書かれている )。これだよこれ、こういうのがほしかったのだよ。選挙はいままで通りやってほしいから、コイツを年に一回日本でやったらどうだ、などと妄想しながら都知事選の選挙公報を見たときの苦々しい記憶を思い出していたのであった。だからのこのブログを書いたのである。
アルテミス像とその他の展示
ギリシア展は撮影禁止なので写真は特にないのだが、個人的に一番気に入ったのは307のアルテミス像だ。最後のセクションで本物を拝むことができる。ネット上にはいくつか写真もある:その1、その2。いくつかエピソードがWikipediaにも載っていてそれがまた傑作だ。エピソードや写真ではちょっと暗く厳しい表情をしているようにみえるが、実物は明るい照明に照らされていてもうちょっとかわいい。好意的に解釈すれば憂いのある表情だ。ギリシア彫刻の男女ともにムキムキとしたマッチョな感じがなく、どちらかというと繊細というか今風の体型になっていて現代人の好みに合うだろう。
その他の展示については、アレクサンドロス大王の彫像だ。男前という風でも、野蛮でもないし、精悍な若者という風でもない、どちらかというと飄々とした表情で、今でいうとマーク・ザッカーバーグのように野心と情熱だけがそこから湧いてくる、今でいうとシリコンバレーにいそうな若者の顔だ。とアリストテレスの彫像が近くに置かれていて、髭面がジッと弟子を見つめているのもおもしろかった。
ドラクマ貨幣の実物もあったし、ドラクマの由来といわれる鉄の棒も展示されていた。ちょうど人間が片手で掴めるのが6本だそうで、鉄棒ひとつかみ分が1ドラクマの由来なのだそうだ。通貨とはつくづく、交換可能性と信用なのだなと思う。別に悪貨が入ってきても、信用の媒体を変えてしまえばよいのだな…などと思って近年やけに取り沙汰されていた某塊鎖的技術に思いを馳せるなどしてしまった。鉄の某が通貨になるんだから、まあ別になんだっていいよね。塊鎖が実用的かどうかは別だけど。
おまけ
特別展のチケットを買うと写真の本館で総合文化展(通常展示)も見ることができる。
本物の刀剣とか、
どうもまだ使われているっぽい黒電話とか、
意外にも綺麗な庭園とか、
毛の生えた兜(写真では赤っぽいが本物はもっと黒い、撮影技術ェ…)とか、
本物の日本漆で作られた江戸時代の箱とか、
愉快な能面とか、
かわいい根付とかを見ることができる。
何よりそこいらのケチな博物館と違って、展示物のほとんどは撮影可能なのがよい。
*1:財産などは没収されなかったらしいし、戻ったらまた政治に復帰することもできたようだ