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人間万事塞翁が鹿

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そういうわけで新卒からずっと勤めていた会社を退職しました。別に隠しておるわけではありませんが、例によってこのブログは想像上の団体・人物により構成されておりますので現実の団体・人物には一切関係ございません。また筆者の関係する団体・人物に関連することなく事実無根でございます。
どうして退職するのかという理由につきましてはご勘弁ください。まあひょんなことから偶然、と書いて偶然とは何だと考えてみるとその事象の主観確率が著しく低いにも関わらず起きてしまったことだと言えるのですが、普段の言動や知己からカルマからまとめて考えると必然だとも言えるわけであります。どうでもいいですね。ここまで読んでくれてありがとうございます。
そんなに前職が大変だったのか、辛かったのかと思い遣っていただけるのかもしれませんがそうではないことを示すために職場がどんなに素晴らしかったか書いておくことにしますね。

すんげえ人がゴロゴロいる

有名なところだと、NILFSLinuxiSCSI target、Sheepdogを作った人がそのへんにいて、かと思えば、某がつく巨大商用サービスの開発をしてたよー、とかそういう人がゴロゴロいます。ちょっと年配の人がiPhone使っていたので「お、いいんですか?w」と軽いノリで聞いたら「だってこのカーネル、ぼくも書いたからねー」とかいう。で、もうちょっと聞いてみるとTAO/ELIS作ってたよー、とか、ああそうそうntt.jpのウェブサーバー立ち上げてジェリー・ヤンっていう大学院生のウェブサイトとリンクしたよ、そこから突然の曙。とかいう人がいたり。ぼくのすぐ近くのだいぶ上の先輩はnue神社の写真とか持っていて見せてくれました。さすがに今はないけど、会社のなかに鳥居があったんですよ?今だったらなんじゃそりゃというような楽しいことを沢山やっていたし、ぼくも自由にいろいろやらせてもらいました。

何を学んだか

そういうすごい人に囲まれていたので、新卒のときは「スレッドナニソレ」「TCPナニソレ」とか言ってた自分がまあよくもここまで来れたもんだなと思います。この会社じゃなかったら僕はずっとみそっかすのままだったでしょう。技術だけではないです。この会社で教わった一番大切なことは、我々のような人種に求められるのは問題解決の能力ではなく、課題設定の能力だということです。問題発見の能力といっても構わないです。受託開発でいえば、顧客の「これをやりたいんだよね〜」と、モヤっとした要求を、矛盾のない形で要件に落とし込んでいくときに、なんとなく考えるのではダメで「顧客のビジネスにどのような課題があって*1、それをこの開発でどう解決するか」を明確に規定しておく能力のことです。OSSの開発でも同じで、ソースが公開されているかどうかは手段の話。自分がほしいものを作ればいいかって?自分だけの問題を解決したならまあそれもある種の自業自得です。研究でいえば…まあこれは様々だし常識なので略。
日本でソフトウェア技術者の給料がどうして安いのかよく考えてください。プログラムを書く能力が統計的に低いだけではないはずです。プログラムを書くのは手段であって、いくら書けるといっても、それは問題解決の能力があることを示しているだけです。そうではなくて、なんのためにプログラムを書くのか、それでどういう課題が解決されるのかを自分で見つけ出せる人間って、誰だと思いますか?よく考えてみてください。プログラムが書けなくても、彼らの給料は高いはずです。
単に現場で手を汚してコードを書いている人間の報酬が低い!と言うのは労働者の愚痴に過ぎません。自分は交換可能な労働者だと開陳しているに過ぎません。そうではなくて、ソフトウェア技術は現場で手を汚しながら顧客の問題を発見し解決することが一人または少人数でき、しかもその仕事がスケールする*2稀なドメインです。まあ大抵は問題発見の能力と問題解決の能力は強く相関しているのですがね。理由は簡単で、何ができるかを理解できないと何を解決すべきかも決められないからです。

語る言葉が何もなかった男が、こういう高説を垂れ流す程度の知恵がついたということです。

環境も(まあまあ)よい

うまく立ち回ればどんなハードウェアでも大抵は手に入るし、机はびっくりするほど広いし、ディスプレイの2,3枚は当たり前、コンピュータはその時々で最高のスペックのものを使うことができます。ボス曰く「コンピュータは人間の道具なのだから、人間の思考を邪魔してはいけない。なるべく邪魔しない高速なものを買うべきだ」が信条の人でした。大企業なのでグレートファイアーウォールがあるのは仕方ないのですが、それでもIX直結の自前ASを持っているということもあって経路がよくてウイルスチェックされなければ回線は太いです。
あとは、会社の敷地内にグラウンドやジムがあって好きな時間に使えるようになっていて、グラウンドにはあまり整備はされていないけど芝が生えていてそこでサッカーしたりなんかできちゃうんです。それから給料もそこそこよいです。日系のIT会社の中ではかなり高い方なんじゃないでしょうか。額面こそ低いですが社宅に入り節税し…としていけば20代でマイホームを手に入れることもできると思います。大抵はみんな30代のうちにマイホームを買ってしまいますね。じゃあ激務かというと、顧客のサービスに関わるときは必要に応じて忙しくはなるのですがずっと忙しいということはなく。

動いているサービスが(山ほど)ある

組織が大きいので経路は長いですが、辿り着ければさまざまなサービスが動いていて、それに携わっている人と話すことができます。その裏側の話を聞けるのはとても楽しかったです。そして、誰もがそのサービスにプライドを持っていることで、いつでも真剣な話ができるのは素晴らしいことだと思います。
ああそうそう自慢ですが、僕らが開発した某巨大システム、商用環境で稼働し始めてもうすぐ1年ですが、一度も障害を起こしていません(そりゃーちっちゃいのはあったけどシステム落ちてない)。


僕が入社したのは2007年で、そこから足掛け5年5ヶ月、合計で65ヶ月ですね。いやあ長いようで短かった。多くの人と知り合うことができました。ふつうは慣習化された終身雇用が確立された会社で、途中でそこから抜けるというと白い目で見られることが多いのですが、ぼくを送り出してくれた人は、笑顔でおめでとうとか次も頑張ってねとか、君が抜けると痛いのだよ困るだからホントやめないでと言ってくれたりもして、しかも送別会を何度も開いてもらって(来週も2,3件ほどありそう)あろうことか花までもらってしまって(写真)、Tシャツに寄せ書きなんかしてくれたりして、僕のようなみそっかすでもああ生きててよかったと感じることができるとても素晴らしいところでした。じゃあなんでそんなところをやめたかって?もっと面白そうなことがあるからに決まってるじゃないか。続報を待て。出ないかもしれないけど。

*1:潜在的な問題だとなおよし

*2:コンピュータが代わりに仕事をする、ソフトウェアはいくらでもコピーができる等