新卒一括採用の歴史は共有地の悲劇の歴史(オチなし)

新卒一括採用の歴史 - なぜ内定式は10月1日に多いのかっていう。日本における新卒採用市場と終身雇用のはなしって、いかにも利己的な連中が出し抜きあった歴史だということが分かる。共有地の悲劇ってんですかねこういうの。そう新卒の学生は共有地なんです。毎年草が生えてくるけど、早く刈らないとみんなにとられてしまう。みんなで「出し抜かないように」ってお約束してもよいけど、これって二酸化炭素排出権をめぐる何とか議定会議で働く力学と同じで、わりと醜いなぁと思います。でもみんなそれで生き残ってきたんだよね。
海外では、どうしてこうならないんだろう?という素直な疑問が湧いてくるよねふつう。
よくあるこたえは解雇規制。解雇規制があるから企業は自分のところに合わない人間をレイオフできない。だから労働市場の流動性がなくて、職と人とのマッチングが芳しくないから会社も自前で育てるしかなく、競争力がつきにくい。
で、そこで。いくつかの理由。が複雑に絡み合っているから、簡単じゃない。

  • 直接的には強すぎる労働組合
  • 間接的には専門家の不在
  • 企業のライフサイクル

雇用規制がどんなもんかよく知らないけど、評価に基づいていても社員を解雇するときはとても苦労する。端的にいうと、解雇するコスト(退職金渡したり)と、そのまま抱えておくコストを比較して後者を選んでしまう企業がいるということ。もちろんこれは正当な状態なんだけど、長期的な視野で正しい選択をするとしたらどっちかわからんけどね。
そこで問題なのは、誤った選択をした企業が淘汰されていないこと…と思って、今生き残っているのは新卒採用で青田刈りしまくった企業ばかりなわけです。こういう企業が生き残っているのは、日本の商業習慣や社会状況にきちんと適応できたおかげ。どういう環境に適応できたのがポイントなんだろう?
よくわからなくなったけど、負のスパイラルを考えてみる。まずは企業側の視点から:

  1. 新卒で一定数採用した。彼らには会社の未来を背負ってほしい
  2. 未来を背負ってほしいので、ちょっとくらいダメなヤツでもみっちり育てて何とかする、もしくは、見合った仕事を社内で見つける
  3. (さんざん育ててコストをかけた後にやめられてはかなわん)だいじょぶ、最初は給料安くてもやめないでね、確実に出世できるようにするから(んで、家族のひとつくらい養えるようにするから)
  4. 会社が育っているので、みーんな昇給、昇格!
  5. 昇格に伴って偉い人が増えていくねーみんな妻子があるねー
  6. 人件費が増えていくけど、会社は成長しなくなる
  7. でも新卒採用はやめられない、将来の保証はできないけどなるべく安い給料でなんとか頑張ってもらおう

あー、やめられないとまらない、ですね。次に、企業に採用される側の視点から:

  1. 新卒で会社に入ったけど、人少ないわりに仕事多くて給料安くてブラックだなー
  2. いろんな仕事を広く浅くやらされて、なんだかなぁ。スーパーマンじゃねえっつの
  3. 給料安いからモノ買えない。
  4. 時間ないから彼女ができない、結婚できない
  5. 外資はいいっていうし、いっちょ転職でもしてみっか

こういう問題を解決するのは誰か?ぼくは経営者だと思う。でも、日本の会社にプロの経営者は少ない。経営はその会社で功績を挙げた人がやるのもいいとは思うけど(実績があるから信頼がある=部下がついてくる*1)、一方で専門分野としての経営学もある。ということはそこに長い時間をかけて蓄積された科学的な知見があって、それを利用しないというのは企業の生存戦略として非常に愚かなことだ。

とはいえ、いかな優秀な経営者でも単独で共有地の悲劇のジレンマから抜け出すのは簡単ではない(とはいえ、方法はあると思うけど)。制度と歴史が複雑に絡みあって今ここに問題が出てきているわけだが、それはどうやって解決したらよいのだろう?

*1:実績をあげることができる、つまりそれなりに潰しのきく能力があるので、経営のセンスもあったりする